神よ、変えることのできるものについて、
それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
変えることのできないものについては、
それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。
そして、
変えることのできるものと、変えることのできないものとを、
識別する知恵を与えたまえ。
(翻訳者:大木 英夫)
O GOD, GIVE US
SERENITY TO ACCEPT WHAT
CANNOT BE CHANGED,
COURAGE TO CHANGE WHAT
SHOULD BE CHANGED,
AND WISDOM TO DISTINGUISH THE ONE FROM
THE OTHER
ラインホルド・ニーバー(Reinhold Niebuhr)
困難への立ち向かい方
「悩み」種類で検索でもお伝えした通り悩みの解決に至っては3種類あります。
- 自分で頑張れば乗り越えられる悩み
- 時間が起てば解決できる悩み
- 受け入れるしかない悩み
この祈りでは自分で頑張れば乗り越えられる悩みに対する勇気を、時間が起てば解決できる悩みと受け入れるしかない悩みに対する冷静さを言及しているように感じます。そして変える為の努力なのか、受け入れる為の冷静さなのか、この二つを見極めることのできる経験や知恵を必要としています。つまり、今抱えている困難な状況はどの様に対処すればいいのか、解決策はどの様に繰り広げることができるか、そのことを見据える力を説いています。
困難に立ち向かう為の勇気が必要であれば待っていてもしかたない。
立ち向かうのであれば立ち向かう勇気を、
困難を受容する為の冷静さが必要であれば挑んだとしてもしかたない。
受け入れるのであれば受け入れる冷静さを、
そして立ち向かう勇気か受け入れる冷静さかの判断をする為の知恵を何よりも必要とした祈りです。
困難に直面したとき知恵を持って対処する。
祈りの背景
この祈りは、ラインホルド・ニーバー氏によって1950年1月に発行された国際的なアルコホーリックス・アノニマス(アルコール依存症の人達)の情報雑誌“Grapevine”に掲載されました。ゆえにAAで採用され、広く知れ渡るようになりました。
また日本語訳に関しては、日本の神学者である東京神学大学名誉教授の大木英夫氏の『終末論的考察(1970)』によって紹介されました。日本語訳としての祈りのタイトルは「平静の祈り」とも「静隠の祈り」とも言われてはいますが『ニーバーの祈り』として広く知られています。
大木英夫氏はニーバー氏に師事されていました。私の想像ではありますが、だからこそニーバー氏の影響を直に受け、尊敬の念を称し、この祈りを翻訳した大木英夫氏は日本において『ニーバーの祈り』と名付けたのではないかと勝手ながら思っています。
from ”Mother Goose”
1695年に発表された英語の伝承童謡の総称であるマザー・グースの韻文でも似たような表現が残されています。
太陽の下にある全ての病は、
For every ailment under the sun
治療法があるか、治療法が無いかだ
There is a remedy, or there is none;
もし一つでもあったなら、それを探しなさい
If there be one, try to find it;
もし何も無かったなら、それは気にしないこと
If there be none, never mind it.
from “The Way of the Bodhisattva”
また、8世紀のインドで随一の学問を誇っていたナーランダ大学の仏教徒である寂天Shantideveはこの祈りと同じような見解を残しています。勿論年代的にはこちらのほうが古いものです。
困難が我々を襲った時、治療法があったなら、
If there’s a remedy when trouble strikes,
落ち込まないといけない何の理由があるだろうか
What reason is there for dejection?
もし助けになるものが何もないなら
And if there is no help for it,
落ち込むことが何の役に立つだろうか
What use is there in being glum?
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