パーソンセンタードアプローチ -person-centered approach-
来談者中心療法として知られていて、今日カウンセリングの原型として確立された心理療法でもあります。1940年代にカール・ロジャース[C. R. Rogers]によって開発されたカウンセリングのアプローチ法。カウンセリングの主体はクライアントにあり、カウンセラーはクライアントの内在している感情や思考を中心とし、カウンセリングが進んでいく。
1940年代:クライアントの問題を分析し原因の処方指示といった従来の方法から、クライアントの内在する成長への力を信頼した非支持的な方法の提示。
1950年代:〔設立・展開の時期〕カウンセラーの人間的姿勢の重視。カウンセラーのパーソナリティや自己に対する 理論的なバックボーンが整備。
1960年代 :〔深まり・実存化の時期〕ウィスコンシン・プロジェクトにおける分裂病患者の治療の試しみ。ジェンドリン[E. T. Gendlin]による体験過程の概念の登場。
1970年代:ロジャース自身より「パーソンセンタードアプローチ (person-centered approach)」 と呼ばれるようになった。個人のみを対象者とした範囲にとどまらず、グループや 社会の人間関係にまで展開。
1940年代~1950年代 来談者中心療法が日本に導入
人間の本質=「自己実現への傾向を持つ有機体(organism)」
- 意識的な判断よりも体感的(organismic experiencing)な判断が重要
- 有機体として最も実現された状態を「十分に機能している人間(fully-functioning person)」と呼んでいる。
治療の目的=自分自身をそのまま受け入れているあるがままの人間
◇自己概念(self-concept)
◇自己一致(self-congruence)
事実である「客観的世界」は一つだが、受け止め方である「主観的世界」人によって異なる。その個々の主観的世界が自分自身の世界「私的な世界」である。人はその事実「客観的世界」を「私的な世界」として受け入れる際に、周囲の人々の価値観を取り入れながら自分に対する見方・受け取り方「自己概念」を形成する。
その自己概念は時には内観的・感覚的経験とする体感とかけ離れることがある、このような状態を「自己不一致(self-incongruence)」と呼び、内観的・感覚的経験とが一致していることが理想である「自己一致」と呼ぶ。
ロジャースによる、クライアントの変容を促す六つの条件
- カウンセラーとクライアントが心理的な接触を持っていること。
- クライアントが自己不一致(incongruence)の状態であること。
- カウンセラーあ自己一致(congruence)の状態であること。
- カウンセラーはクライアントに対して無条件の肯定的な配慮(unconditional positive regard)を経験していること。
- ウンセラーはクライアントの世界を共感的に理解(empathic understanding)し、その経験をクライアントに伝達するように努めていること。
- カウンセラーが(4)と(5)の状態にあることを、クライアントが知覚していること。
上記の条件の中で、カウンセラー側の条件として
- 自己一致、純粋性(genuineness)、真実であること(real)
- 無条件の肯定的配慮(積極的関心)、受容(acceptance)、配慮(caring)、所有欲のない愛(non-possessive love)
- 共感的(感情移入的)理解
単なる技法ではなく、カウンセラーの姿勢、態度(パーソナリティ)がカウンセリングの成否に重大な影響を及ぼす。
来談者中心療法の注意点
相手の内面性を尊重するあまり、環境への働きかけをしない現状肯定主義(適応主義)に陥りやすくなる。内面的成長への欲求を重視するあまり、助言や説明など教えたりする積極的な働きかけに罪悪感を抱く結果に成りかねない。相手の客観的理解を得られないまま、いたずらに面接あ繰り返される恐れがある。
参考文献
小林司(編)『カウンセリング大事典』新曜社、2004
國分康考(編)『カウンセリング辞典』誠信書房、1990